No−147(風)製作記
(1997年10月完成)

(2000年6月記)


No-147(風)の内部MJ97年9月号のNo−147の147たる所以は、初段差動アンプに真空管を起用していることだろう。「No−147(風)」と名付けたこのアンプはご覧のとおり初段差動アンプに真空管を用いていない。
したがってこれに147の名称を用いるのは詐称だが、まあ「風(ふう)」ということで。(^^;

金田式DCアンプは完全対称型で新時代に入った。これにより旧世代となった電池式G.O.Aの時代は10年ぐらい続いただろうか。電池式G.O.Aについては、電池のメンテナンスや電池の種類による音の変化、内部抵抗が高い電池を電源にすることへの疑問など、懐疑的な声もあったようだが、私にとっては、小さく、軽く、作りやすく、安定度が高く、しかも音は抜けるように澄みきっていて、素晴らしいものであった。

が、久しぶりに製作したNo−144も、新時代の完全対称型として高い音楽表現の可能性を示してくれた。となれば、我が家のメインシステムはTADユニットによる2WAYマルチなので、完全対称型の真価を確かめるためにも、もう一台完全対称型パワーアンプを製作しなければならない。(などど屁理屈を付けて大蔵大臣にお願いする。m(_ _)m)

と思っていた時期に発表されたのがNo−147だった。(金田さんの制作スピードは大変なものと感心させられる。)

No-147(風)の基盤部それは金田さんがNo−144で予告していたとおり、No−144の電源部をちょっとアレンジすればそれがそのまま電源部となる、初段真空管起用のハイブリッドパワーアンプであった。

また、増幅素子の入力対出力特性のエキスパンダー特性、コンプレッサー特性にも着目し、真空管、TR、J−FET、MOS−FETを適材適所に混用するという、かつての金田さんの発言からは考えられないようなものだった。君子は豹変する・・・ということか。

ま、そんなことはどうでも良いのだが、(お許しを得て)せっかくまた完全対称型DCパワーアンプ作るのならばNo−144と同じものを作るのは面白くないので、No−147のエキスパンダー思想だけ取り入れることとし、初段に真空管を用いないNo−147(風)パワーアンプを製作することにした。
何故って、真空管までは触手が伸びなくて・・・高圧は感電がいやだし(^^;。

さて、となれば回路はこれしかないだろう、なんて偉そうだが、なんということはなくNo−144の一部をTRに置き換えただけだ。

C1400なんて最近金田アンプファンになられた方はご存じないかもしれないが、かつての名器もデッドストックでは素子に申し訳ないのでC1775の代わりに働いてもらうことにしたもの。

なお、部品集めは地方ではやはり容易ではないし、早く作ることが命題でもあったので、またしてもテクニカルサンヨーからNo−144のアンプ部だけということで一括入手した。このころ(97年9月頃)でも双信の丸型ポリカーボが入手できた。C1400とC960は手持ちストックで対応する。コパルのN−13T500Ωはこれも手持ちストックだ。かつて金田さんは接点一つも音質劣化要因という潔癖性に徹した頃があり、このためGOA時代に活用機会がなかったストックが生きることとなった。

2SK1297の配線製作自体は、「No−144製作記」に記載したとおりで、このアンプで特記する内容はない。
これでは製作記にならないのだが、電源部が既に製作済みなので労力が半分以下ですむところがNo−144の電源部分離方式はやはり優れたコンセプトだなあ、と実感するところ。

何もないので、半田付けについて。右は放熱器に取り付けたUHC−MOSと配線用基盤、半田が丸くなり光沢が出るようにという金田さんの注意だが、練習すれば誰でも出来るもの。ストリップした内部銅線を捩って予備半田し1mm〜1.5mm位に短く切ってから基盤に半田付けすると綺麗に出来るようだ。

2台目でもあるので、動作の調整も上手く完了し、何の問題もなく完成したのだった。

が、このアンプのアイドリング電流は、電源ON直後に200mAに調整すると温度上昇とともに増えてしまう。やむを得ないので温度上昇とともにアイドリング電流をVR2で再調整する作業をし、安定状態で200mAになるようにした。こうすると再度アンプが冷えた状態になってから電源ONした瞬間のアイドリング電流は100mA以下で、徐々に増えて200mAで安定するという推移になる。

その理由は98年3月号のNo−149で早速改良されたように温度係数が正のC960の温度補償がされていないせいだが、UHC−MOSからのフィードバックが十分利いているらしく、(これが曲者だが、上蓋さえ開けておけば)際限なく上昇するという補償不足状態に陥るわけではないのでそのままにしてある。

さて、音だが、幸か不幸か私にはFETが一部TRに変わったことぐらいによる音の差を感知するほど優れた聴覚は備わっていないようで、ましてエキスパンダー特性とコンプレッサー特性の差と言われても分からないとしか言いようがないが、そう言えばNo−144が端正とすればこちらはやや奔放な感じもするかなあ・・・。な〜んて(^^)。